2026年9月10日(木)、宍粟防災センター研修室1にて9月例会を開催しました。
今回は西播磨地域が抱える野生鳥獣被害をテーマに、専門家による講演とグループワークを実施。会員に加え、ゲストとして宍粟市商工会青年部の皆さま13名にもご参加いただき、活気ある学びの場となりました。
「次世代に残したい自然と文化〜新しい地域貢献のかたち〜」講演レポート

講師には、兵庫県光都農林・森林第1課の職員の方をお招きしました。獣害対策の最前線で捕獲事業や森林保護管理に携わってこられた立場から、データと現場の実感の両面で西播磨地域の「今」を語っていただきました。
講演のポイント
兵庫県は北は日本海、南は瀬戸内海に面し、淡路島も擁する自然豊かな県土を持ち、獣類40種類、鳥類330種類が確認されています。しかしその豊かさは、シカやイノシシをはじめとする野生動物による被害の多さとも表裏一体です。講演では、被害の実態から対策の課題、そして地域として今後どう向き合っていくべきかまで、幅広い内容が語られました。
ポイント1:深刻化する野生鳥獣被害の実態
令和6年度、兵庫県全体の農林業被害額は総額約5億円にのぼり、そのうち農業被害が約4億5,000万円を占めます。主な加害獣種はイノシシで、シカと合わせて被害の大半を占めています。西播磨管内でも、令和5年度時点で約2,000万円・47ヘクタールの被害が確認されており、しかもこれは行政が把握できた範囲に過ぎず、実態はさらに大きい可能性があるとの指摘がありました。
ポイント2:対策の三本柱とそれぞれの限界
被害対策は「環境改善」「侵入防止」「捕獲」の三本柱で進められています。里山の緩衝帯整備には数千万円規模の費用がかかることもあり、所有者不明の土地や高齢化により作業の担い手が不足しています。防護柵も夏場の草刈りなど維持管理の負担が大きく、少しの不備で被害を防ぎきれません。捕獲も、罠の見回りから捕獲後の処分まで一貫して手間とコストがかかり、狩猟者の高齢化も相まって、いずれの対策も「継続」させることの難しさが共通の壁になっています。
ポイント3:捕獲コストと収支のギャップ
管内7市町のシカ捕獲実績は年間約9,300頭。報奨金単価7,000円で試算すると約6,500万円のコストがかかる一方、西播磨管内の農林業被害額は約2,000万円にとどまります。数字だけを見れば「対策をしない方が収支は良い」ことになってしまいますが、講師は、生活被害や精神的被害など金額に換算できない損失も含めて考える必要があると強調しました。自然環境を単なるコストではなく地域の「経営資源」として捉え、行政や狩猟者任せにせず地域全体で取り組む視点の転換が求められています。
ポイント4:身近に迫るアライグマ問題
西播磨では特定外来生物のアライグマが近年増加しています。繁殖力が高く生息域を拡大中で、農業被害だけでなく、糞尿による家屋の傷みや伝染病のリスクといった生活被害ももたらします。シカ・イノシシ・クマ対策に追われる中でまだ対策の手が十分に回っていない、今まさに「拡大期」にある問題として、早期の対応の重要性が語られました。
グループワーク「獣害対策を地域のビジネスに変える」ワーク

講演の学びを踏まえ、4つのグループに分かれてグループワークを実施しました。
各グループの発表から
短時間の議論にもかかわらず、4つのグループそれぞれから具体的で個性豊かなアイデアが発表されました。
・捕獲した動物を「稼げる資源」に変える
食肉のブランド化を軸に、皮を使った車のシートやレザー製品への加工、ブランド化しにくい部位の海外輸出、動物園への餌としての活用など、捕獲物を余すことなく収益化するアイデアが提案されました。あわせて、ハンター向け機材のレンタルや、獣害が深刻な地域への人材派遣など、捕獲そのものを支える仕組みへの提案もありました。
・里山を「観光資源」に変える
森林整備によって人と動物の境界(バッファーゾーン)を明確にしつつ、広大な自然保護区を整備。狩猟体験や動物観察を軸にした観光地化を目指す案です。ドローンによる生態観察・映像配信、地元の飲食店やホテルと連携したジビエ体験、街歩きまで含めた周遊観光など、獣害対策を入口にした地域振興のアイデアが発表されました。
・捕獲エリアと販路を分けて考える
猟師による従来の捕獲エリアと、ドローンなど新しい技術を使った捕獲エリアを分ける案です。新鮮な個体は高タンパク・低カロリーな健康食材として海外へ輸出し、時間が経ったものは動物園の餌として活用、皮も加工してレザー製品にするなど、状態に応じた振り分けが提案されました。
・「植える木」を変える発想
これまで木材生産を目的に杉・檜を植えてきた植林を、動物が好むどんぐりや柿など「食べられる木」に置き換え、里山ではなく山奥に動物を引き寄せるエリアをつくるという案。捕獲した肉の活用先として、地元自治体への買い取りや学校給食への活用といった、地域に根差した循環の提案も出ました。

業種の異なるメンバーが混ざり合うことで、獣害対策を「コスト」ではなく「新しい産業の種」として捉え直す視点が数多く生まれた時間となったのではないかなと思います。
まとめ
野生鳥獣被害は、行政や一部の担い手だけでは解決できない、地域全体の課題です。
今回の例会が、参加した一人ひとりにとって、自然環境を「守るべきコスト」から「活かすべき経営資源」へと捉え直すきっかけとなれば幸いです。西播磨青年会議所では、今後も地域の課題に正面から向き合う事業を展開してまいります。
文責:西播磨発掘委員会 重田 直人
2026年度2月公開例会「地域の未来をつくる中小企業」開催レポート
2026年2月18日(水)、佐用町・笹ヶ丘荘にて、2026年度2月例会を開催しました。公開例会として設えた本例会では、同志社大学商学部より関智宏教授をお招きし「地域の未来をつくる中小企業」をテーマとした講演会を実施。地域に根ざす中小企業が果たすべき役割や、企業が社会とどのように向き合うべきかなどについてお話しいただきました。


